ゼミ見学者からご質問がいくつか寄せられました。
これからゼミの選択希望を出すみなさんに役に立つ情報もあるかもしれないと思い、いくつか取り上げてこちらのエントリーにまとめました。
昨年度まで寄せられたご質問への回答も含めて掲載し、随時更新していきます。
Q1 ゼミというのは授業と何が違うのでしょうか。
A1 とても重要な問いですね。
そして、答えを与えられることのないままゼミを選択しろなどと言われて、実は困っている2年生も多くいらっしゃるのかもしれません。
ゼミによっても答えが少し変わってくるかもしれませんが、私なりに回答します。
ゼミというものが通常の授業と大きく異なるのは、少人数の同じメンバーで2年間学ぶという点ではないかと思います。
ですから、ゼミ生どうしもお互いをよく知ることができますし、ゼミ生と教員との間でも同じです。
これは、よりきめ細かな指導につながったり、ゼミ生どうしでお互いに刺激を与え合って切磋琢磨できる環境につながったりします。
たとえば教員側としては、3年生の1年間をともにした上で、4年生で扱う題材の方向性を考え直すなどといったこともできます。
現時点でこのような能力や課題を持っているから、2年後までにはこういったことを達成できるようにがんばったらどうか、などと長期的な目標について相談したりすることもできます。
当然、ゼミ生どうしでそういった個々の取り組みを共有し、各々が2年間で達成したいことをお互いにサポートするということもできる、というか、それができれば理想的です。
より実際的なところでは、就職活動とゼミ活動との折り合いも付けやすい(この時期は就活に集中する分、この時期にゼミ活動に力を入れようなどの相談が柔軟に可能になる)ということも挙げられます。
別の言い方をすれば、ゼミというのは2年間をともにするコミュニティーであるということがもっとも重要な点かもしれません。
卒業後もそのつながりはなんらかの形で続きます。
(もちろん、強制ではないですから一線を引いた付き合いというものもじゅうぶん可能です。)
また、ゼミは教員の色が出ますので、私の考え方などが反映されるところがあります。
私自身、大学というのはある程度独立した個人どうしが互いにリスペクトを持ち、必要があれば助け合う場、と捉えていますので、私のゼミの方もほどよい距離感で仲良くやっているという印象です。
そして最後に、ゼミの雰囲気という点で大事なのはゼミ生自身です。
これは、教員の持つ影響力より大きいのではないかと思います。
私がまだ着任4年目ということもあるのか、良くも悪くもまだゼミの色が付いていないという感じがあります。
今のところ4年度分のゼミを見てきましたが、年度によって雰囲気は実に多様だなと感じていて、おそらくそれは良いことなんだろうという印象を持っています。
答えになっているでしょうか?
Q2 ゼミ生の報告回では担当範囲などどのように決めているのでしょうか。
これは私も他の先生方のやり方が気になるところですが、私は自分ですべて割り振るときと、ゼミ生に任せるときと両方あります。
ひとつの作品を単純にゼミ生で分ければよい場合などは、特に順番による大きな不平等は起きないので、任せるときが多いです。
全部で○ページあるから、これをゼミ生全員で何日から何日の間でうまく割り振ってね、という依頼をゼミリーダーチーム(各学年3人います)に対して行うこともあります。
それでゼミリーダーが決めてくれた結果を知らせてもらい、不具合や不明点があれば随時教員とゼミ生とで再調整する、という感じです。
研究報告会の順番なども同じような感じです。
報告順や担当範囲を含めた運営については、ゼミ生の方でできる部分は任せている、という感じでしょうか。
他方で、私の方で細かく割り振りを行うこともあります。
たとえば、お互いの書いた成果物を論評し合うようなときは偏りが出てしまうと効果的でないので、同じ作品を扱った人と違う作品を扱った人とが両方入るように取り計らったりするということも今までありました。
簡単にまとめると、ランダムに分けても学習効果や平等性に問題が生じないと思われるときは任せ、学期全体とかゼミ全体のバランスを見た方がよいと思われるときは教員が割り振りを行い、微調整だけ任せるということになるでしょうか。
Q3 卒業生の方の卒論のテーマについて伺いたいです。
具体的な題目についてはこちらのエントリーをご覧くださいませ。
基本的に、扱いたいものを扱ってほしいというやり方なので、いかにも世界文学らしい『千夜一夜物語』や、やや社会科学的な志向でエイズアクティビズムについて扱ったもの、ディズニー作品のプリンセス像を扱ったもの、フランダースの犬の原作とアニメ版とを比較検討したものなどとても幅広いです。
特に、翻訳(translation)と翻案(adaptation)とは世界文学という分野を特徴付けるもので、そのようなアプローチのものが毎年あることはこのゼミらしいと言えるかもしれません。
いわゆる正典(canon)と呼ばれる王道の文学作品(ジョージ・エリオットやヴァージニア・ウルフ、ジェイムズ・ジョイス、スコット・フィッツジェラルドなど)や、児童文学作品(『フランダースの犬』や『赤毛のアン』、ナルニア国物語シリーズ、メアリー・ポピンズシリーズなど)が少なからずあるのも特徴的でしょうか。
2026年度の4年生にもこの傾向は引き継がれている感があります。
こう挙げてみると、いくらなんでも幅が広すぎるのではないか、という批判や困惑もあり得るように思います、一応私の言い分としては、このゼミの特徴が出るのは扱う作品の種類というよりは、作品について考察して論文にまとめ上げるまでのアプローチだということが言えます。
また、軸足と言えるようなものはあって、20世紀前半のアイルランド、イギリスに関わるものが(教員の専門上)多いです。
それは、直接その時代、地域で生まれた作品(『ダブリンの人々』や『ダロウェイ夫人』など)だけでなく、20世紀前半のアイルランド、イギリスで参照された他の時代とか場所の作品(『フランケンシュタイン』や『ミドルマーチ』)や、あるいは逆に20世紀前半のアイルランド、イギリスの作品が影響を与えたもの(『ブルックリン』や、『メアリー・ポピンズ』などの各種ディズニー映画)も含みます。
ですので、対象となる作品はさまざまであっても、それぞれの卒業論文を読んでいただければ、どれもこのゼミらしいものになっているという感想を抱かれるのではないかと思っています。
Q4 卒業論文執筆はいつから始まりますか。
2年間ある中で、卒業論文の対象作品を本格的に決めてもらうのがだいたい3年生から4年生に進級する春休みで、このときに面談もしながら方向性を定めます(これはゼミによって異なると思います)。
3年生の間はなるべく視野を広げてもらい、その中でだんだんと自分の関心の所在を意識してもらいたい、という方針です。
Q5 3年後期から留学を検討しています。留学に行く学生へのゼミでの対応はどのようになっていますか。🆕
A5 同じような方は他にもいらっしゃるかもしれませんね。
私のゼミも5年目に入りますが、半年の派遣留学、1年間の交換留学と、すでにのべ5人以上が経験しています。
数週間の語学研修も多いです。
決まった対応というものはないのですが、私個人としても留学は大いに奨励していますので、なるべく思い切って海外で学んでこられる環境を整えられるよう努めています。
たとえば、留学予定者とともに留学中の計画を週単位で立てて、遠隔でもゼミの活動に参加できるように工夫してきました。
具体的な対応の形については留学先によっても変わってきますが(特に時差ですね)、基本的に心配ありません。
すでに留学のヴィジョンがあれば個別にご相談いただければ、より詳細にご説明させていただきます。
Q6 最大で何人募集しているのでしょうか? どのような学生(の行動)を求めていますか?🆕
A6 3年次進学者の数やゼミの数なども大きな要因となるので人数についてはなんとも言えませんが、募集人数の設定はありません。
今は4年生が16人、3年生が11人在籍しています。
求める学生像というのも、特にこれと掲げているものはないです。
ゼミの扱う分野や教員の専門についてご理解いただいているとよりいっそう環境をご活用いただけるだろうとは思いますが、実際に3〜4年生になってみて初めてわかることも多いはずです。
ゼミの概要でも「大きな問題を意識しつつ細部を疎かにしないという態度」とか「個人で独立して活動する力」「他の受講生と協働する力」とかを挙げていますが、そこにも書いているように、これらはゼミに入るときの必須条件というよりは、入ってからぜひ一緒に培っていきたい力ということで書いています。
「どういう目的を持って入るかはっきりしていた方が、自分にとってゼミでの2年間を有効活用できる」、という発想でこのゼミについて知ってもらえればと思います。
それとは真逆のことを言っている感じになりますが、「今までなんとなく学生生活にモヤモヤしたものを抱えていたけれども、3年からは心機一転しっかりがんばりたい」という人も私の心情としては大いに歓迎しています。
それだけ、3年生になってからガラッと変わるという学生は多いです。
長々と書いた割に、答えになっていないかもしれませんね……
強いて言えば、3年生から(も)しっかり学んでいきたい学生、でしょうか!
Q7 本日のゼミ見学では前期の課題をみなさんで検討していましたが、課題で扱う作品はあらかじめ指定されているのでしょうか、あるいは学生自身が決めているのでしょうか?🆕
A7 (見学にいらっしゃらなかった方のために説明しますと、)ゼミ見学の週では前期末の課題小論文をお互いに検討し合う、という活動を行いましたが、題材は James Joyce の ‘Araby’ という物語でした。
これは前期の後半にゼミで扱った作品です。
作品をセクションに分けてゼミ生の中で分担して口頭で発表してもらい、課題としてその担当範囲を中心とした小論文を書いてもらいました。
(ですので、また別の物語を割り当てられた学生もいます。)
基本的に、提出課題として扱うものは学期中にゼミで扱った作品ということになります。
学生自身が扱う作品を決めるのがまさに卒業論文で、学生の希望を元に教員と話し合い、最終的に決定します。
Q8 卒業論文の言語指定はありますか?🆕
A8 はい、「日本語か英語」で書くことになっています。
そのどちらかは任せていて、ほとんどの卒業生は日本語で書いてきましたが、英語で書いた学生もいます(「これまでの卒業論文」の記事もご参照くださいませ)。
Q9 通常のゼミの進め方を教えてほしいです。ゼミではひとつの作品を全員で読み、解説を受け、論文を書き、改善していく、という形ですか?🆕
A9 Q7 への回答と重なるのですが、通常もっとも多い活動は輪読、つまり同じ文学作品をゼミ生で分担して読むというものです。
分担範囲を口頭で発表し、その内容についてゼミ生どうしで議論します。
全員で議論するのが基本ですが、発表担当者の他にディスカッサントという役割を割り当てます。
ディスカッサントというのは、発表内容について最初にコメントする役です。
発表に対してディスカッサントが具体的に反応することで、その後の教室全体での議論が活発になります。
もちろん教員も議論に参加し、ゼミ生が気付いていないポイントについてはフォローします。
そのような意味では、文学作品ではなく各々の課題を検討するという形でしたが、ゼミ見学の際の進め方と同じです(メインの発表/課題の成果物に対してディスカッサントがコメントし、教員も含めた全員で議論する)。
ゼミではアウトプットも同様に重視しているので、ご質問の通り、小論文(essay)を検討してよくしていくというプロセスも踏みます。
おっしゃる通り、最終的に卒業論文というものを書くことの準備にもなっています。
昔の大学では — 今もそういう文化のところもあるかもしれませんが — レポートや小論文の書き方をまったく教わっていないのにいきなり卒業論文書けと言われるというのがけっこう普通でした。
しかしそれだとたいていの人は困ると思われますので、当ゼミではある程度学術的な文章の書き方、すなわちアカデミック・ライティングも扱います。
私のその他の文学科目を受講した方もいらっしゃると思うのですが、それに近いと思います。
ゼミで小テストは行わず、口頭報告やそれに基づいた小論文の執筆が付くイメージです。
(私の専門科目でも昨年度まではそのように進めていたのですが、今年度から方法を変えました。)
Q10 ゼミではいくつの作品を扱いますか。🆕
A10 各学期でひとつかふたつ、メインの作品を扱い、その派生作品なども扱います。
たとえば3年後期ではアントン・チェーホフの『ワーニャ伯父さん』という戯曲を扱いますが、それに着想を得たヴァージニア・ウルフの「ワーニャ伯父さん」という短編、村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」という短編、さらにその村上の短編を元にした映画『ドライブ・マイ・カー』を扱います。
さらに4年次には、個々のゼミ生が卒業論文で扱う作品の抜粋を全員で読むという活動も行っています。
ですので、今の4年生はのべ16作品ですね(重複もあるので14作品)。
Q11 いきなりこのレベルの essay を書ける自信がないのですが、なにか essay を書く際の事前学習などはあるのでしょうか? また、essay のテーマはどのように決めているのでしょうか?🆕
A11 これまでの回答でも言及した通り、ゼミ見学の際でご覧いただいた活動は、ゼミ生が書いた課題(essay = 小論文)を検討し合うものでした。
こちらの質問は、そのゼミ見学を踏まえてのものとなります。
それで、今回はやや想定を超えて3年生の小論文の水準が高く、さらに、それに対してのコメントの水準も高かったと感じております。
想定を超えて、というのは、教員側としては懇切丁寧に小論文の書き方を事前に指導していなかったというのがあります。
これまでの活動で感じていることですが、今の3年生は、与えられた課題に対してかなり真摯に取り組む印象があり(これまでの3年生との比較ではありません!)、今回の活動だけではなく前期のゼミ内での口頭発表などもかなりしっかりしたものであったと思います。
そのようなわけで、現3年生の美徳によるところもあるかもしれません。
他方で、ゼミ内で完全にゼロから小論文を書かせたわけでもありません。
前期の輪読の中で、口頭報告の際にどのように問題を設定するべきか、報告資料はどのように作るべきか、といったことは折に触れて話しています。
小論文は、口頭報告の発展系として書ける部分があるので、良い口頭報告とはなにかということに時間を割いた成果が出た側面はあると思います。
また、課題を出す際に、どのような点に気を付けるべきかについて一応少し(3〜40分くらい?)扱いました。
とはいえ最終的には、一を聞いて十を知るというか、ゼミ生の理解や取り組みがよかったということなのでしょう。
小論文のテーマについては任せていますが、口頭報告の際にいくつか「問い」を設定させて、読む際にどのような問題設定をするのがよいかなどの話はしました。
また、これもごく簡単にではありますが、論文題の付け方についても少しだけ話しています。